横河マニュファクチャリング株式会社

掲載日:2025/12/03 (更新日 2026/2/05)

Vol.10

ものづくりの新たな価値を創造し、 持続可能な社会の実現にも貢献

 

 世界トップレベルの技術と品質を誇り、プロセス制御の世界市場でも高い評価と実績を持つ横河電機株式会社。1974年に、同社の主要生産拠点として国母工業団地内に誕生し、現在は横河電機の生産部門を統括する横河マニュファクチャリングの最大生産拠点として躍動する甲府事業所を訪ね、横河マニュファクチャリング代表取締役社長の永井博氏に、事業内容や今後の展望などについてお聞きしました。

 

 

 

グローバル企業 横河電機の生産部門を統括し、
世界で信頼されるものづくりを一手に担う

 

Q:最初に、横河マニュファクチャリングについてご紹介ください。

 

 横河マニュファクチャリングは、創業から110年続く横河電機グループ(以下、YOKOGAWA)傘下の企業です。YOKOGAWAは、上下水道や発電所、石油精製プラントといった、大規模な工場や施設で使用される工業計器や、プラント全体を制御する制御システム、さらには研究者や技術者がラボで実験する際に使用する測定器などの製造・販売を生業としています。売り上げの9割を占める工業計器・制御システムの納品先の多くは社会にとって重要なインフラ設備や止まったら大損害になる重厚長大のプラント設備であるため、不具合が起こりにくく安定して稼働し続ける長期信頼性を重視されるお客様、センサーには高精度を求めるお客様が大部分を占めており、そうした高い要求にしっかりと応え、貢献していくことが、YOKOGAWAのビジネスとなっています。

 
▲(写真1枚目)工業計器の一つ差圧・圧力伝送器
 (写真2枚目)分析計の一つプロセスガスクロマトグラフ(写真3枚目)測定器の一つオシロスコープ

 

 YOKOGAWAでは、基本的にすべての製品をグループ企業で生産しており、その生産部門を統括し、工業計器と測定器の製造を担っているのが、私たち横河マニュファクチャリングです。一言でいうなら、YOKOGAWAのものづくり集団の中枢。メーカーのコアになる部分を担っていると自負しています。

 YOKOGAWAの生産体制は現在、世界12か国の生産拠点で約4,000人。横河マニュファクチャリングは、東京都武蔵野市の本社に加え、甲府、小峰(東京都あきる野市)、駒ヶ根(長野県上伊那郡宮田村)、金沢(石川県金沢市)と国内に4つの生産拠点がありますが、なかでも最大規模を誇るのが、甲府事業所です。

 ▲YOKOGAWAのグローバル生産体制

   
▲(写真1枚目)横河電機の
創業者 横河民輔氏 (写真2枚目)横河電機製作所(現横河電機)の社屋(渋谷 1930年頃)

 

 

Q:続いて、甲府事業所についてもご紹介いただけますか。

 

 甲府市国母工業団地内にある甲府事業所は、当初、横河電機の本社工場に次ぐ拠点として建設されました。当時、数ある候補地の中から甲府を選んだ理由としては、環境に恵まれ生活しやすい場所であること、都心や本社からのアクセスが良いことがあり、今後の発展が見込まれるという点も大きなポイントでした。そして、地域にしっかりと貢献できる存在でありたいとの方針のもと、「県民に喜ばれる工場」「品質マキシマム、コストミニマムの工場」を掲げ、1974年に操業を開始。2024年に50周年を迎えました。

 この間、グループの再編などさまざまな経緯を経て、現在は、12万平方メートルの広大な敷地に約900名の従業員が働くYOKOGAWAの一大生産拠点であると同時に、従業員の9割以上が地元採用という、地域に密着した工場ともなっています。

 


▲ 現在の甲府事業所
 
▲ (写真1枚目)甲府事業所用地(1972年2月) (写真2枚目)甲府事業所操業開始当初

 

 

Q:どのような事業を行っておられるのですか?

 

 各生産拠点にはそれぞれ特徴があり、小峰はクレーンで持ち上げるような大きな製品、対して甲府では、我々がプロダクト系と呼ぶテーブルの上に乗るくらいのサイズの製品を生産しています。また、駒ヶ根では、甲府で製造している工業計器用センサーの主力製品、差圧・圧力伝送器に使用する半導体を、金沢では、製薬会社が薬の効き具合を評価する際に使用するライフサイエンス製品などを提供しています。

 

 
▲ (写真1枚目)小峰事業所の製造現場(写真2枚目)駒ヶ根事業所の製造現場

 

 さらに、海外の主力工場として、韓国、シンガポール、インドネシア、中国があります。こちらもそれぞれにカラーがあり、韓国は比較的小型のコントローラー(制御装置)、シンガポールとインドネシアは、プラントの制御室にパネルが並んでいるような大規模な制御システムのコントローラー、中国では、各種パイプラインにおいて液体や気体がどのくらい流れたのかを測る流量計をメインに製造しています。

 このようにそれぞれの工場に主力製品があるなか、最も規模が大きく多様な製品を製造している拠点が甲府事業所です。甲府にしかない技術も多く、世界中の生産拠点から研修生を受け入れて、トレーニングを行い、技術を身につけさせる役割も担っています。

 


▲ 甲府事業所の製造現場

 

 

自社製品を向上させることで、世界を変える!未来を変える!
壮大なビジョンのもとで目指すサステナビリティ目標Three Goals

 

Q:YOKOGAWAのコアを担うものづくり集団として、技術を磨き切磋琢磨する「YOKOGAWAものづくり大会」があるそうですね。

 

 毎年12月初旬に開催しています。これは、品質や技術の向上を目的とした一大イベントで、YOKOGAWAのものづくり技術と知見を有するメンバーが世界中から甲府に集まり、技能、技術、改善をテーマに、勉強会や発表会を行い、はんだ付け、溶接、機械計測などのスキルを競い合います。一堂に会して交流を図ることで、すべての拠点で同じ考え方のもとでものづくりができるようになるだけでなく、さまざまなコラボレーションが生まれ、次のステップや新たな展開にもつながっていく、非常に意義のある大会です。

 この大会には各拠点ともに力を入れており、精鋭を厳選し、存分に鍛え上げて甲府に送り込んできます。迎え撃つ我々としても負けてはいられませんので、先日日本代表を選出した際も、本選に向けてもう一段階レベルを上げるよう、叱咤激励したところです。

 


▲ YOKOGAWAものづくり大会の集合写真

 

 

Q:社員の士気を上げ、技術を高め継承する機会であると同時に、全世界に広がる生産拠点が絆を深める貴重な機会でもあるのですね。ところで、ここ数年、立て続けにM&Aで海外拠点を増やすなど積極的に世界戦略を進めておられるようですが、その背景にはどのような理由があるのでしょうか?

 

 YOKOGAWAの売り上げは現在6,000億円弱ですが、2030年にあるべき姿として、売上高1兆円を掲げています。これを実現すべく全グループ会社が一丸となって取り組む中、我々としてもどのような貢献ができるのかを日々模索しており、新たな販路や技術を吸収できる企業をM&Aで迎え入れたり、グローバルな視点でものづくりを見ながら納期短縮や材料供給などのサプライチェーンの効率化を図る方法を探ったりと、積極的な海外戦略もその一環として行っています。

 

 

Q:5年間で売上げ倍増というのは相当なインパクトですが、こうした姿を目指す理由を教えてください。

 

 YOKOGAWAでは、2050年に目指す社会の姿として、サステナビリティ目標「Three Goals」を掲げています。ここでいう3つのゴールとは、温室効果ガスの排出を±0にする「ネットゼロ・エミッション」、人々の健康と豊かな暮らしを支援する「ウェルビーイング」、そして資源循環と水資源の確保・効率利用に貢献する「サーキュラーエコノミー」を指しますが、どれも地球規模の課題であり、例えばネットゼロ・エミッションにしても、YOKOGAWAだけが温室効果ガスの排出量をゼロにしたところで、それほど意味はありません。では、どうやって実現するのかと言えば、我々には、例えば火力発電プラントや製鉄所など、温室効果ガスの排出量の多いお客様が数多くいらっしゃいます。そこで、我々の製品を通してそうした企業の排出量を減らすことができれば、世界規模でかなりの効果が出ることになる。つまり、我々がより良い製品とそれを活用したソリューションをお客様に提供することで、ネットゼロ・エミッションを達成しようという考え方が根本にあります。そして、それを実現するためには、YOKOGAWA自体が一定の売上規模の企業になり、社会に対する影響力を相応に備えることが必要です。そのマイルストーンとして2030年に1兆円というビジョンを掲げているのです。

 

 

 

 

Q:つまり、お客様の工場に使われているYOKOGAWAの製品が、温室効果ガスの排出量が少なくても、今と同程度あるいはそれ以上の成果を収められるとなれば、たとえお客様が特別な取り組みをしなくても、結果的に温室効果ガスの排出量は減少すると。そうやって、地球の未来を変えていこうということなのですね。素晴らしいですね!

 

 このように、会社の業績のためだけでなく社会を良くするために仕事をしようという目標を掲げることで、誇りを持って仕事に取り組めるようになり、社員のモチベーションアップにもつながります。そういった意味でも、この『Three Goals』は極めて重要なのです。

 ちなみにYOKOGAWAの事業は、「エネルギー&サステナビリティ事業」「ライフ事業」「マテリアル事業」という3つの括りがあり、これが『Three Goals』の一つひとつとリンクしています。組織的にも、全社一丸となって『Three Goals』を達成する体制になっています。その中で、当社には、「ものづくりは何をしてくれるのか?」ということが問われているわけです。

 

 

Q:具体的には、どのような取り組みをされているのですか?

 

 当然といえば当然なのですが、我々は工場を持っていますのでエネルギーをたくさん使っています。そこで、まずは自分たちを良くすることから始めようということで、ものづくりの現場でネットゼロ・エミッションを追求しています。この取り組みは、単に我々の工場での取り組みにとどまらず、大きな可能性を秘めています。というのも、我々が工場でネットゼロ・エミッションを実現できれば、そこで培われたノウハウはお客様のところでも活かせるはずです。今後は、そうしたノウハウを広げていくことにも取り組んでいきます。

 
 
▲ (写真1枚目)波形測定器組立ライン総合検査  (写真2枚目)板金曲げ加工

 

 

生産だけではない!工場の新たな価値を世の中に示すVOF事業とこれから

 

Q:最近、旬な事業があるとお聞きしましたが、どのような事業ですか?

 

 甲府事業所では、以前から、地域の学校、国内外の取引先などの工場見学を積極的に受け入れてきており、現在も年間200件ほど、お客様企業を中心に多くの方々が工場に来られます。当社としては、「こういう工場でこうやってしっかりと作っていますから安心して製品を使ってください」というスタンスで、普段通りのものづくりの現場をご覧いただいているのですが、過去からの変遷をご説明すると、お客様から、「YOKOGAWAさんは、どうしてこんなに変わることができたのですか?」と驚かれることが少なくありません。そこで、そのように評価してくださるお客様のご相談にお応えできるのではないかと考え、コンサルティングサービスを始めました。


 
▲ ショールームを見学する様子

 

 

Q:製造業がコンサルティング業務を展開するとは、あまり聞いたことがありません。どのような経緯で、どのようなコンサルティングをされることになったのでしょうか?

 

 近年、ものづくりの現場は、働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(以下DX)、カーボンニュートラルなど、これまでのやり方では通用しないさまざまな課題に直面しています。そうしたなか、工場見学に来られた方から、例えば、「エネルギーの管理にはどのように取り組んでいるのですか?」とか、「DXにはどのように取り組んでいるのですか?」といった質問をいただくことがあります。我々も我々なりに試行錯誤しながらものづくりの現場を良くする工夫を続けてきているので、そのような場合には、「このような考えのもと、このような取り組みを行い、このような成果が出ています」と我々の経験を紹介してきたのですが、今後は、さらに踏み込んだ対応ができるのではないかと考えています。

 

 

 

Q:この事業では、何が提供できるのですか?

 

 当社では、1981年から45年くらいかけてトヨタの生産システムを源流としたニュー・ヨコガワ・プロダクション・システム(NYPS)を構築してきており、生産ラインも、その考え方に基づいて作られています。また、2014年には「次世代工場構築プロジェクト」を立ち上げ、人中心、内部価値向上、外部価値提供という3つの方向性を打ち出して、この約10年間でさまざまな取り組みをしてきました。そうした数々の取り組みの結果が現在の姿なので、まずはこの姿を見ていただき、「興味をお持ちいただいた点があればお手伝いもできますよ」というスタンスで事業を進めています。

 

 お客様と話をしていると、「DX」「ロボティクス」「AI」などといったキーワードは意識しているものの具体的に何をすればいいのかわからず悩んでいたり、システムを導入したものの使いこなせず壁にぶつかったりしているケースが多いようです。我々も、同じような悩みを経験し、失敗を重ねながら前進してきたので、わかり合える部分が多いし、「うちがやりたかったことはまさにこれです!」と解決方法が見つかることもあります。そこはやはりものづくりを担う者同士、通じ合うものが多いこともあり、おかげさまでご好評をいただいています。

 
 
▲ 精密加工をプログラムする様子

 

 実は、こうした取り組みは、以前から工場見学に来られたお客様からの、「相談に乗ってほしい」「もう少し詳しく話を聞かせてほしい」といった声にお応えする形でやってきていたのですが、そうした声が増えてきたことで、我々のノウハウや経験値には相応の価値があるのではないか、工場見学だけでなくその先のサポートも我々にできるのではないかと考えるに至りました。そして、単に良い製品を作ってお客様にお届けするということにとどまらず、もっと違う価値もあるということで、バリュー・オブ・アワー・ファクトリーズ(Value of Our Factories)を略したVOF推進室を立ち上げ、コンサルティング業務を開始しています。

 

 

Q:これまでとは違う工場の価値を見出し、事業化したということなのですね。

 

 YOKOGAWAの中期経営計画の大きな施策のひとつに、無形資産をしっかりと活用しようということがあります。YOKOGAWAにとっては、知的財産、特許なども無形資産ということになりますが、当社の場合は、人財、スキル、そしてこのノウハウこそが無形資本だと考えています。そして、それを明確に世の中に提供していくことが、先ほどお話したサステナビリティ目標『Three Goals』にもつながっていく。これは、当社にとっても、グループ全体にとっても、大きなステップだと考えています。

 

 
▲スキルとノウハウが大切な製造工程の一つ旋盤加工

 

 今、世の中がどんどん変化していますが、我々の主戦場であるものづくりの現場は、それがさらに顕著です。例えば、エネルギーや廃棄物、化学物質、情報セキュリティー…。20年前には許容されていたことが、次々と解決すべき課題となり新たな要求がなされるようになっていて、正直、頭を抱えるような状況です。そしてそれは、世の中のものづくりに携わるすべての企業に共通しています。だからこそ、我々自身がいかに早く的確に変化に追従するかということが大事で、そこで培ったノウハウに価値が生まれる。変化はチャンスでもあるのですから。

 

 

Q:最後に、山梨県民そして甲府市民へのメッセージをお願いします。

 

 横河電機・横河マニュファクチャリングの甲府事業所は、今から約50年前に「県民に喜ばれる工場」を目指してスタートしました。これからも、私たちなりの方法で山梨県・甲府市の価値を高めるために力を尽くしていきますので、変革に悩んでおられる企業の方々はもちろん、ものづくりに興味のある学生さんや地域の方々にも、ぜひ一度、工場見学に来ていただけたらと思います。

 

 

信玄公祭りへの参加(2025年4月)
 
▲ 信玄公祭りにて初陣した時の様子(1974年)。

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INFORMATION

横河マニュファクチャリング株式会社


企業名/横河マニュファクチャリング株式会社
所在地/〒400-8558 山梨県甲府市高室町155
ホームページ/https://www.yokogawa.com/jp-ymg/