株式会社 石友

掲載日:2018/10/10 (更新日 2018/10/11)

Relayed

Vol.3

ジュエリーを通してお客様の人生に寄り添える企業であり続けたい。

 

石友の創業から現在

 

「石友は創業者で現会長の松葉惇が、1969年に創業、1972年に株式会社石友商会として設立しました。

高度経済成長期には室内装飾の宝石画を扱っていましたが、業界が低迷してきた時に、室内装飾販売事業を一切やめて、ジュエリー1本に事業を絞りました。

当時の社員は8名。室内装飾品を扱っていた時には、東京や浜松に支店があり、120名程の社員がいましたので、ジュエリーに事業を絞ることは、大きな決断でした。」

 

株式会社 石友の向山孝明社長は当時を振り返り、このように語ります。

向山社長と松葉現会長は従兄弟。創業時には向山社長は20歳。2年間財務の勉強を経たあと、財務担当として石友に入社。そして何の経験もないままにジュエリー業界の現場へと飛び込みました。

 

石友 向山孝明社長

 

1983年のジュエリーへの事業集約を経て、石友はジュエリーの輸入販売を手掛け、順調に業績を上げていきます。そして、再び転機が訪れます。

 

「平成元年。甲府商工会議所が主催する異業種交流会で工業団地を作ろうという話が持ち上がりました。」

 

「その頃私たちは、【これからは自社で製作した商品を販売していかないと生き残れない】という危機感と現状では【自分たちが販売した商品のメンテナンスが責任を持ってできない】というジレンマを抱えていました。」

 

当時の本社は都市計画法の用途地域の一つである「準工業地域」にあったため、ジュエリーの販売はできても製品は作れませんでした。

 

「新しい工業団地では、自分たちで商品を作ることができる。」

 

ジレンマの解決・そして企業としての理想を実現するために、石友は自社工場を持ち、自分たちで作ったものを販売していくという方向に舵をきりました。

そして準備期間を経て、平成6年(1994)に、将来的にはジュエリーメーカーになることを目指し、本社工場を甲府市川田町「アリア・ディ・フィレンツェ」内に移転しました。

 

石友 本社工場

本社工場 外観

 

現在は、「心を入れて創り、心を込めて売る」を社是として、自社ブランド製品およびOEM(※1)ODM(※2)などを社内一貫生産体制で、製作から販売まで手がけています。

 

※1 OEM製造:Original Equipment Manufacturingの略。委託者のブランドで製品を生産すること

※2 ODM:Original Design Manufacturingの略。委託者のブランドで製品を設計・生産すること

 

 

 会社の特徴:石友クオリティを支える、石友の強みと人材育成

石友クオリティを支える一貫生産販売体制

 

「わたしたちは、原料を海外から直接調達し、自社のデザイナー・職人が商品を製作し、自社で販売する一貫生産販売体制をとっています。これにより品質の管理を徹底して行えます。」

 

この一貫生産販売体制こそが石友クオリティだと向山社長。

この石友クオリティを支えるために、小規模のジュエリー製造業者では導入が難しい、大規模な生産設備や、品質管理のための高度な測定装置などを積極的に導入し、一貫生産販売体制を補完し、生産クオリティの維持向上にも努めています。

 

 

レジェンド・オブ・ジュエリーシリーズ。ブラック・オパールの周囲に取り巻かれた天然ダイヤモンドも高品質のものを厳選している。

 

そして、このようなジュエリー製作の全工程を、石友では、見学できるようにしました。

 

「移転の計画段階からこの社屋にお客様にお迎えして、製作の現場を見ていただこうと考えていました。お客様が見学に来ていただく機会をチャンスととらえて、どのように高い品質を維持しているのか、説明しながら工程を見ていただきます。

実際、製作現場を見ていただいた方がわたしたちのものづくりの姿勢が伝わりやすいのです。」

 

石友 ダイヤモンドの選別 石友 デザイン画

(左写真)メレダイヤモンド(約0.1~0.2カラット以下のダイヤモンド)の選別作業。一口にダイヤモンドといっても、それぞれ色合いが異なる。石友では品質や色による選別は、すべて人の目によるもの。

(右写真)デザイン画。デザインから製作・販売まですべての過程を社内で行う。

 

石友 純度95%のプラチナ合金「Koo-fu Pt950」

産地ブランド「koo-fu」のために開発された純度95%のプラチナ合金「Koo-fu Pt950」。純度が高ければ柔らかくなるプラチナを独自の加工技術により従来の硬さの2倍にした。

石友では原則すべての製品に使用している。

 

石友 石留め 石友 磨き作業

(左写真)石留め作業。非常に繊細で細かい作業のため、ルーペはかかせない。(右写真)磨き作業。見えるところだけではなく、見えないところまで磨ききる。

「Koo-fu Pt950」を使用することで、デザインの自由度も広がったが、他の地金よりも格段に加工が難しくなった。

「『Koo-fu Pt950』の変形しにくく、傷つきにくいという特徴は、お客様にとっては扱いやすい、身に着けやすいということ。加工は難しいですが、身につけるお客様にとってよりよい製品をお届けしたいのです。」と向山社長。

 

全体を考えながら仕事することの大切さ

 

高い品質を支えているのは、技術だけではありません。

 

「高い品質の維持と同様に、お客様によりよいサービスを提供することが必要だと考えています。例えば弊社のデザイナーは、デザインを描くだけ、企画をするだけのデザイナーではありません。工賃の計算もできるように教育指導していくので、営業の資質を持つデザイナーが育ちます。お客様にすれば、デザイナーが一人来れば、営業面からデザインまでの打ち合わせが済みます。このように各社員の質も上がっていかないと、お客様に対するサービスの質を上げることは出来ません。」

 

このような社員の質を高めるきっかけとなったのは向山社長の経験によるもの。

話は創業当時に戻ります。当時は社員数も少なく、向山社長は財務だけをやっていれば良いという状況ではありませんでした。

昼間は他の社員とともに営業や雑務をこなし、夜、財務処理をして社長に報告する毎日を過ごしました。

 

「現場の仕事をしながら、経理の事務処理もしていたので、この伝票はどういう経緯でまわってきたのか、よくわかる訳です。伝票の処理のみしていたら、どのようにして仕事が成り立っているのか分からないまま、処理して「はい終わり」になっていたかもしれません。」

 

若い頃に営業の現場から経理で処理するまでの仕事の流れ、全体を考えながら仕事することの大切さを学んだことが、のちに非常にプラスになったと言います。

 

石友 向山孝明社長

 

「その経験もあって、仕事とは自分で考え、実現のために最善の方法を模索しながら進めるものだと思います。

会社に来て、言われたことをこなすだけの仕事は楽しくない。同じ時間を過ごすのであれば、自分で考えて仕事をした方が楽しいですよ。」

 

その経験が、今の石友の社内の雰囲気づくりに一役買っているのかもしれません。

 

「わたしたちは、ジュエリーを好きな人たちが集まっている集団です。好きなことをやるのに自分たちがより良い方法で考えて仕事ができる環境を作ることが、必要だと考えています。」

 

「出来るようにするために考えろ。それが仕事だ。」というのは、創業者である松葉会長の言葉。

できるようにするために工夫したり、考えたりすることで、社員も成長する。

社員一人一人が自主的に動いて仕事をしているのが、今の石友だと言います。

このビジョンが石友の将来を考える上でとても大切なことなのだと向山社長は考えています。

 

 

職人を育てる 人材育成

 

社員一人一人の姿勢を大切にする石友。その姿勢は人材育成にも現れています。

創業者である松葉会長は「どんな中小企業であっても人を育てないと将来はない。人を育てることに焦点を合わせた事業をしなければいけない。」という信念をもっていました。

 

「石友は、社員として職人を雇用し、育成しています。多くの同業他社は、社員として職人を雇用しないのが現状です。なぜなら職人を育てるには投資が必要だから。採算が取れるかどうかわからないリスクを背負いたがらないのです。」

 

「確かに職人を育てていくことは大変です。

ジュエリー業界では、職人の携わる工程は、分業制をとっている場合が大半です。わたしたちも社内生産を始めた当初は、分業制をとっていました。」

 

13年前、工場の責任者から「製造工程の社員たちが、一人一人の仕事の領域を広げたい。他の工程もやらせて欲しいという声があがっている」という相談が、向山社長の元に届きました。

 

「分業制は、職人にとって担当しているひとつの工程しかわからないけれども、その工程を覚えれば仕事も早くなるし、生産量も上がります。

一方で本当にこの仕事が好きで入社してき方たちを会社の都合でひとつの作業しか覚えられない環境におくというのは、よくないというのもわかる。しかし、全部の仕事を覚えてしまうと、独立してしまうかもしれないというリスクもある

どうすればみんなの意見をまとめることができるのか、悩みましたね。」

 

スタッフの間でも激しい議論が交わされましたが、技術が身について独立した際には、「石友の仕事をしてもらおう」という結論に至り、松葉会長に職人がすべての工程に携われるようにさせたいと進言しました。

 

「採算は合うのか?」

と松葉会長。

「絶対合わないと思います。ただ、合うまでやれば、もっと生産能力が上がるし、お客様にも技術力の向上が製品を見れば分かっていただけるようになるはずです。」

という向山社長の言葉に最終的に松葉会長は承認してくれました。

 

石友 若手の育成 石友 石留め作業

「石友クオリティ」を支える製作の現場。

 

「ひとりの職人が全ての工程に携わる「セル生産方式」が軌道に乗るまで、10年かかりました。しかし、この決断があったからこそ、一貫体制で生産ができるようになったのです。

現在はほとんどの職人が全ての工程に携われます。

そして、独立した職人はいません。結果として心配していた人材流出はなく、職人の技術・技能の向上と仕事に対する誇りややりがいにつながっていると思います。」

 

石友にとっての課題とその解決について

人材の確保について

 

「一番の課題になっているのは、人材の確保です。特に私たちが必要とする人材、ジュエリーが好きだとか、ものづくりが好きだという人材が非常に少なくなっています。」

 

と向山社長。

社内では人材育成で人材に多様性を持たせることができますが、新規に人材を確保するという視点からは難儀しているとのこと。

 

「私たちの工場には、ジュエリーを勉強している学生の方も見学に来られます。実際に製作作業を体感できる場で、私たちの仕事の内容や将来のビジョンをお伝えしています。

これはお客様だけではなく、将来我々の仕事に関わる方たちにも、将来我々のお客様になっていただく方たちにもメッセージを伝えていくということが重要だと考えるからです。」

将来へのビジョンやメッセージで、石友に共感していただくだけでなく、人材の確保には、働く環境の整備も大切だと考えています。

 

「弊社では現在80名の社員のうち、女性が半数を占めています。以前は結婚出産などで退職する方も多かったのですが、近年は産休や育休を利用して職場復帰しています。

経験を積んだ方の復帰は会社にとってもメリットが大きいですが、お休みをとっている間は携わっていたポジションが抜けてしまいます。

そこで私たちは、たとえば事務系なら、経理・総務・管理など複数の業務を経験できるようにし、人が足りない時には他の社員が補えるようにしています。」

それは社員にとってもスキルアップ・キャリアアップにつながる施策だと考えています。

 

石友 品質管理 石友 原型製作

デザイン、製作、品質管理など様々な分野で女性が活躍している。

 

また高齢化や少子化による国内市場の縮小も懸念されています。

 

「現在、弊社では商品の約98%を国内市場で販売をしています。約2%が香港ジュエリーフェアなどの海外のフェアでの販売です。海外市場での売上を総売上の3/1までにすることが今後5年間の計画です。」

 

ただ、石友では海外市場への進出は、海外への生産現場の移転と同義だとは考えていません。

 

「海外に製作拠点を持てば、コストを抑えることができますが、私たちは考えていません。

私たちは日本で作った商品を海外で販売していきたいのです。」

 

日本製品、日本のジュエリーの良さをわかっていただけるように、海外市場を目指したいと考えています。

日本、そして甲府で作られる石友クオリティの製品が世界中へ発信されていくのです。

 

甲府市のジュエリー業界について

 

「多くの業界で、担い手不足が問題になっていますが、ジュエリーの産地として職人さんが育たないというのは、致命的です。

自社で職人を育成しないのは、リスクを負わなくてすむかもしれませんが、果たしてそれで将来大丈夫なのかという不安は常に持っています。

産地と名乗るのであれば、作り手はちゃんと育てていかなければだめだと思います。」

 

石友の内外の課題を通じて、山梨・甲府のジュエリー業界の抱える課題も見えてきたという向山社長。石友で職人の育成をしてきたからこそ、その不安は大きいです。

 

「ジュエリー業界も含めた地場産業は、自分たちだけが良ければいいのではなく、地域全体の産業が潤うような形をとっていくことが役割だと思っています。

自社だけではなく、地域のことも考えるからこそ、自治体も支援してくれるのです。」

 

「例えば私たちの工場を見学したあと、甲府市で食事や宿泊をしていただく。訪れる方が増えれば、観光面での雇用も創出できるし、甲府市の住民も増える。また製作現場を見学する事でジュエリーの製作を職業として選択する方もいるかもしれない。

そういった積み重ねは大切にしていきたいと思います。」

 

山梨・甲府のジュエリー業界の抱える課題も「全体を考えながら仕事することの大切さ」の視点から、石友ならではの方法で問題解決される日も近いのかもしれない。

 

 

将来のビジョンについて

 

「私の時代では難しいかもしれないが、自社商品の直接販売する店舗を持ちたい。」

 

向山社長の視線の先には、石友と顧客を結ぶ赤い糸が見えています。

 

「メーカーが店舗を持つということは、新しいモノを作って販売するだけではありません。

今みなさんがお持ちのジュエリーには、いろいろな思い出が詰まっています。

 

例えば母親から譲られたジュエリーだけれども、デザインが古くて身に付けられない。

いろいろな想いが詰まっているジュエリーを今風にアレンジして使っていただく。

そういうリメイクをし、そこに新しい価値観を創り上げることができるのも私たちの仕事だと思っています。

新しいモノだけを提供する事が、メーカーの仕事ではないのです。

ジュエリーを通してお客様の人生に寄り添える企業であり続けたい。

すごくやりがいのある仕事だと思います。」

 

SNSが活用され、様々な価値観が乱立するこの時代。

ジュエリー業界だけでなく、全体を俯瞰し、その上でお客様一人一人と真摯に向き合い何を求められているかを察知してそれを仕事に活かしていく。

その姿勢は、石友だけの将来のビジョンではなく、山梨・甲府のジュエリー業界の抱える課題の解決への手がかりとなるかもしれません。

 

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INFORMATION

株式会社 石友

企業名/株式会社 石友
創業/昭和44年(1969年)
会社設立/昭和47年(1972年)
本社所在地/
〒400-0811 山梨県甲府市川田町アリア106
電話/055-220-1711(代)
FAX/055-220-1777
ホームページ/https://ishitomo.co.jp/